社会委員会が下記の要望書を首相ならびに法務省に送付をいたしました。
2024年5月9日
内閣総理大臣 岸田文雄様法務大臣 小泉龍司様「永住資格取り消し法案」の廃案を求める要望書 わたしたちは、どの国の人であろうとも人としての権利と生活が守られるべきという立場から、現在国会で審議されています入管法・入管特例法改定「永住権取り消し法案」に反対し、同法案の廃案を求めます。 わたしたちの社会には、さまざまな民族的背景や国籍をもった、300万人を越える外国籍の住民が暮らしています。しかしこの法案は、こうした方々が安心して仕事をし、家族を形成し、子育てをして地域社会で生活していく人としての権利を奪おうとするものだといわざるを得ないからです。 日本において「永住許可」を得るには、一般に10年を越える継続的な居住の他、膨大な書類の準備に加えて、申請後も長期間に及ぶ厳しい審査が課せられています。そこまでして永住資格を取得しても、国外に出るにあたって再入国に許可が必要であったり、在留カードの常時携帯が義務づけられるなど、諸外国と比べて一段と厳しい条件が付されています。ところが今回の一連の法改定は、そうした要件を緩和するのではなく、いったん取得した永住資格を行政の恣意的な運用によって簡単に取り消すことができるような内容となっています。この法案は、永住資格を取得した外国人であっても、在留カードの常時携帯、7年ごとの在留カード更新、14日以内の住居地変更届け出などの入管法に違反した場合、税金や社会保険料を支払うことが出来なくなった場合、住居侵入罪などにより執行猶予を含む拘禁刑1年以下が科せられた場合には、その永住資格を取り消すのだといいます。つまりどれだけ日本で生活し、家族と共同生活を営み、生活の基盤を築いたとしても、事業失敗などで税金や社会保険料を滞納しただけで、日本社会で生活していく根拠を剥奪するというのです。このような軽微な法令違反で永住者としての在留資格を取り消すこの法案は、日本が加入する人種差別撤廃条約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と第5条(非差別・法の前の平等)、自由権規約の第2条(締約国の差別撤廃義務)と第26条(非差別・法の前の平等)にも、明確に違反しているといえます。 こうした法案が成立すれば、外国籍住民は日本社会で安心して生活できなくなりますし、また日本社会に定住し、住民としての責任を果たしていこうという社会形成への責任的思いすらも阻害しかねません。 わたしたちは、日本にあるキリスト教会として、このように大きな問題をはらんだこの法案の廃案を求めます。また、聖書が教える共に生きる社会の実現のために、外国籍住民が安心して社会で生活していくことが出来るような、包括的な外国籍住民の保護法である、外国人住民基本法の制定を求めます。主は寄留の民を守り、みなしごとやもめを励まされる。しかし主は、逆らう者の道をくつがえされる。(聖書 詩編146篇)東京都新宿区市谷砂土原町1-1日本福音ルーテル教会社会委員会委員長 小泉基