A nativity scene decorates a wall outside a church in Bogotá, Colombia. Photo: courtesy of Albin Hillert |
ルーテル世界連盟のムーサ議長より、世界に向けられたクリスマスメッセージです。
「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。」 (ルカ2章10-11節)
愛する姉妹、兄弟の皆様
ご降誕のキリストの恵みと平和が、今もそしてとこしえまで豊かにありますように。
贖い主イエス・キリストの降誕をお祝いする季節クリスマスが今年もやってきました。
ルカ福音書はキリスト誕生に際して、出し抜けに警告を発しています、「恐れるな」。しかしすぐその後にほっとする一言が続きます、「大きな喜び(good news)を告げる」。
「恐れるな」で始めたのはなぜでしょうか。トラウマ、分裂、偏見、排斥は恐れから起こります。恐れると、他者をあたたかく迎え入れ、もてなし、優しくすることができなくなります。恐れは人に不信感を植え付けてしまうため、せっかくの大きな喜びグッドニュースも聞き逃してしまいかねません。恐れは人とのつながり、グループを引き裂くのです。悲しいかな私の母国ナイジェリアでは、民族と宗教を理由に分裂してしまった地域がいくつもあります。すべて原因は他者に対する恐れです。
社会が変わり、そこに幾ばくかの平穏を取り戻していくには、他者に対する恐れを克服しなければなりません。人類が平和のうちに共存していくことを、恐れが邪魔をしてはなりません。地理的距離がもはや隔たりとはならなくなった今日の世界では、なおのことそうです。宗教、文化、出身地の違いゆえに「違う(ようにみえる)人」(stranger)に対するおもてなしは、まず最初に恐れを払拭することで本物になります。
イエス・キリストのグッドニュース(福音)は、恐れが消えることで伝わります。福音は、もっと人々に仕えるようにと私たちを駆り立て促します。ですからこの福音を掲げて前へ進もうと思ったら、危険を伴うような状況下であっても尻込みせずに関わっていかねばなりません。人類全体にとっての真の豊かさの実現を阻むような体制や組織に立ち向かい、チャレンジしていくことを恐れてはならないのです。
2018年は世界人権宣言70周年の年でした。他者の人権と尊厳を踏みにじるいかなる行為に対しても、断固として立ち向かい糾弾していく勇気を得た年といえます。
兄弟姉妹の皆さん、恐れることはありません。感謝をもって福音を受け取ってください。みことばを託された者として出向き、この世界に関わっていきましょう。今日、天使がそのように私たちに語りかけています。クリスマスに際しキリストは、不正と暴力に対して決して寛容ではなかったのです。そのキリストに従う者として、私たちに妥協の道はありません。むしろ揺るぎない正義と真の平和への行動、やさしさのこもったおもてなし、そして人を生かす奉仕のわざ(ディアコニア)を心すべきなのです。
最後にもう一度天使の言葉を繰り返します。「恐れるな」。
メリークリスマス
パンティ・フィリブス・ムーサ博士
世界ルーテル連盟議長
(ナイジェリアルーテル教会総監督 )